賃貸不動産経営において新築・中古を問わずワンルームマンションをお勧めしない理由

賃貸経営の基礎

賃貸不動産経営に初めて挑戦する際、選択肢は多岐にわたります。多くの不動産業者がワンルームマンションを推奨してくるかと思いますが、「新築ワンルームマンションはお勧めできない」という話を耳にすることも多いでしょう。しかし、中古のワンルームマンションが優れているかと言えば、実際にはそうとは限りません。私の見解として、賃貸不動産経営において新築・中古を問わずワンルームマンションはお勧めできません。その理由を以下に詳述します。

1. 高い修繕費用負担

賃貸物件を提供する中で、時折発生する修繕が避けられません。エアコンの故障、漏水、排水管の詰まりなど、これらの修繕は賃借人の過失がない限り、賃貸人(物件所有者)が負担する必要があります。特に、漏水や排水管の修理にかかる費用は部屋の広さに関わらずほぼ同じです。

例えば、排水管の老朽化によって漏水が発生し、その修理費用が50,000円かかるとしましょう。賃料が150,000円のファミリータイプのマンションでは、修繕費用は賃料の1/3に相当しますが、賃料が50,000円のワンルームマンションでは、修繕費用は1か月分の賃料に相当します。このように、修繕費用が賃料に与える影響は、ワンルームマンションの方が大きくなります。

2. 激化する市場競争

ワンルームマンションは、多くの投資不動産物件を扱う業者が推奨するため、初心者がこの分野に参入する際の一般的な選択肢となっています。その結果、競争が非常に激化しています。競合物件が多数存在し、さらに次々と新築物件が供給されることで、築古の物件は競争力を失いがちです。特に、少子高齢化が進む中、人口は減少傾向にあり、空室が増える一因となっています。

このような状況下で、条件の悪いワンルームマンションは最も早く空室になりやすいです。狭小ワンルームマンションは、良い住環境とは言えず、住み心地の悪さから市場から敬遠される傾向があります。

3. 利回りの低下

狭小のワンルームマンションは、リノベーションの可能性が低い場合があります。例えば、3点ユニット式のバス・トイレを分割しようとしても、面積制約から不可能なことが多いです。この場合、賃料を下げて客付けを試みるしかなく、利回りが低下する結果となります。賃料を上げると、将来の売却時における価格設定も難しくなることが考えられます。

4. 管理組合への無関心

ワンルームマンションのオーナーは、主に投資目的で物件を購入している場合が多く、実際にその物件に住んでいないことが一般的です。そのため、マンション全体の運営や管理について真剣に考えるオーナーは少なく、管理組合の運営が疎かになるリスクがあります。

このような状況では、管理会社が建物の運営を丸投げされ、利益を優先する運営が行われることが多いです。その結果、物件の管理が不十分となり、資産価値の減少を招く要因ともなります。

5. 限られた出口戦略

ワンルームマンションの出口戦略は、ファミリータイプに比べて半分程度に限られます。主な理由は、購入者が投資目的に限られ、居住用としての需要が少ないからです。さらに、住宅ローンの面積要件を満たさないことが多く、自己居住を目的としてもローンを利用できない場合が多いのです。このため、現金で住宅を購入する人は非常に稀であり、ワンルームマンションは実需層に対して需要が限られてしまいます。

※住宅ローンの面積要件は、内法30㎡以上と定めている金融機関が多いです。なお、この数字は住宅ローンの対象物件としての可否判断基準であって、住宅ローン減税の話ではありません。住宅ローン減税の観点からすれば内法50㎡以上とお考え下さい。(所得1000万円以下の場合、新築物件であれば、40㎡以上でも住宅ローン減税が適用されます。)

6. 銀行評価の低さ

金融機関の視点から見ると、ワンルームマンションは評価が低くなりがちです。これは、将来的なステップアップを考える際に不利に働くことがあります。特に、規模拡大を目指している投資家にとって、ワンルームマンションの所有はあまり有利な選択肢とは言えません。評価が低いと、次の物件への融資が難しくなり、資産の拡大が阻害される可能性があります。

7. 働き方の変化に伴う需要減

コロナ禍の影響で、都心部で働くことに疑問を持つ人が少なからず出てきました。また、企業も必ずしも社員に対して毎日出社義務を課す必要がないことに気付きつつあります。これらの要因から、都心部にある狭くて賃料の高いワンルームマンションに住む必要性を感じない人が増えています。このような人々が増加すると、当然、都心部の狭小ワンルームマンションの需要は減少し、空室リスクが高まります。


これらの理由から、ワンルームマンションは賃貸不動産経営において必ずしもお勧めできる選択肢ではありません。投資を考える際には、リスクとリターンを十分に考慮し、他の物件タイプとの比較検討を行うことが重要です。