Netflixドラマ『地面師たち』の感想:現実の地面師との違い

お金の話

Netflixのドラマ『地面師』をご覧になりましたか?視聴者からは、そのスリリングな内容に引き込まれたという声も多いですね。実際、私自身は、7話を一気に見てしまいました。ところで、現実の事件とはどう違うのでしょうか?

現実の地面師は殺人を犯さない

ドラマ『地面師たち』では、地面師が暴力的な行為や時には殺人を犯す描写がされていました。しかし、実際の地面師は殺人を犯すことはほとんどなく、主に詐欺行為を行っています。地面師は他人の土地を不正に売却し、利益を得ることで知られています。したがって、彼らに適用されるのは詐欺罪であり、有罪となった場合、刑法第246条によって最高で10年の懲役が科されます。

地面師の詐欺手法:土地の名義を偽る

地面師の詐欺の手口は、土地の名義を偽り、第三者に売却することです。彼らは巧妙に偽造された書類を用いて、あたかも自分が土地の正当な所有者であるかのように装います。この手法によって、地面師は購入者を欺き、土地の売却代金を不正に得るのです。被害者は購入後に土地の所有権が無効であることに気づき、大きな損害を被ることになります。

また、地面師は公的な土地登記簿を利用して、ターゲットとなる土地を選定することが多いです。このような詐欺行為を行うためには、高度な知識とネットワークが必要であり、地面師はその点で非常に頭脳的な犯罪者といえます。

地面師が扱われる犯罪区分:知能犯

地面師の行為は、いわゆる知能犯の一種とされます。知能犯とは、詐欺、通貨偽造、贈収賄、背任、脱税、不正取引など、経済的な利益を目的とした犯罪の総称です。このような犯罪は通常、警察の捜査第二課が担当します。地面師の活動も、頭脳を使って人を騙し、利益を得るという意味で典型的な知能犯に分類されます。

知能犯としての地面師:専門知識と巧妙な手口

知能犯としての地面師は、不動産に関する専門的な知識を持ち、巧妙な手口を駆使して詐欺を行います。土地の権利関係や登記手続きについて深く理解しており、その知識を悪用することで、第三者を欺いています。こうした犯罪には計画性が求められ、実行には時間と労力がかかるため、地面師は冷静かつ計算高い犯罪者と言えるでしょう。

地面師、被害者に対して巧妙に接近し、信頼を勝ち取ることで詐欺を成立させます。例えば、偽の身分証明書や公的な書類を用いて、土地の所有権を偽造します。このような詐欺行為は、一見して見抜くのが難しいため、多くの被害者が騙されてしまいます。

詐欺罪とその刑罰:地面師の刑罰はどの程度?

地面師が逮捕されると、詐欺罪で有罪判決を受けた場合、懲役期間は最大で10年となります。ただし、初犯であったり、被害者との示談が成立している場合には、執行猶予が付くことや刑が軽減されることもあります。

地面師の資金洗浄:出所後も困らない生活

地面師が詐欺で得た資金は、資金洗浄(マネーロンダリング)されます。これは、得たお金の出所を隠し、合法な収入のように見せかけるプロセスです。この資金洗浄により、地面師は捜査当局に資金を追跡されることを回避することができます。地面師が行うマネーロンダリングには、複数の手法があります。例えば、架空の会社を設立し、その会社を通じて不正資金を洗浄する方法や、海外の銀行口座を利用して資金を移動させる方法などがあります。こうした手法により、詐欺で得た資金は合法的なものに見せかけられ、捜査当局が追跡するのは非常に困難になります。

資金洗浄を成功させた地面師は、出所後も生活に困ることはありません。彼らは不正に得た資金を元手に、再び不動産取引に関与したり、表向きには合法なビジネスを立ち上げたりすることがあります。そのため、地面師が再犯するリスクは依然として高く、社会的な監視が必要です。

積水ハウスの実例とNetflixドラマとの違い

2017年に発生した積水ハウスの事件では、地面師グループが偽造された身分証明書や登記書類を利用して、土地取引を偽装しました。積水ハウスは、この偽装された取引に基づいて約55億円を支払い、その後に土地の所有権が実際には移転していないことが判明しました。この事件は、日本国内で大きな話題となり、不動産取引における地面師の脅威を改めて浮き彫りにしました。

Netflixの地面師は、積水ハウスは、過去に地面師による詐欺事件を題材に製作されています。但し、積水ハウスの事例とNetflixドラマでは以下の点で違いがあります。

  • 被害額がドラマでは100億円となっているが、実際には55億円である。
  • 舞台がドラマではお寺となっているが、実際には旅館であった。
  • 沖縄にホストとして連れ出されたという描写があるが、実際には旅館の女将が入院していた。

積水ハウスが被害に遭った五反田の土地は、その後、旭化成によって購入されました。旭化成はこの土地を再開発し、マンションを建設するプロジェクトを進めました。最終的にこの土地を積水ハウスが購入できればよかったのでしょうが、本来の取引には全く関与することができずに終結することとなりました。

Netflixドラマとの違い:暴力性と手口のリアリティ

Netflixのドラマ『地面師たち』では、地面師が暴力的な行為や時には殺人に及ぶシーンが描かれていますが、積水ハウスの事件のように、実際の地面師は主に書類の偽造や詐欺といった頭脳的な手口を駆使しています。暴力に頼らず、巧妙に偽造書類を作成し、法的手続きを偽装することで企業を欺くことが現実の地面師の手口です。

積水ハウスの事件では、暴力的な脅しや強引な手段ではなく、書類の信頼性を利用した詐欺が行われており、これが多くの企業や個人にとって非常に厄介な点です。Netflixのドラマがエンターテインメント性を重視しているのに対し、積水ハウス事件は現実の地面師の非暴力的かつ高度な詐欺手法を象徴しています。

時給換算すると地面師の収入はいくらなのか?

地面師が積水ハウスから詐取した金額は約55億円です。積水ハウス事件に関与した地面師グループの人数については、報道によると少なくとも15人以上のグループが関与していたとされています。彼らはそれぞれ役割を分担し、偽造書類の作成や取引の準備などを行っていました。これを仮に地面師が計画から実行までにかけた期間を1年間(365日)とし、1日8時間労働で算出してみましょう。

計算式:

  • 延べ総労働時間 = 365日 × 8時間 x15人= 43800時間
  • 時給 = 55億円 ÷ 43800時間 ≈ 125,570円

1人あたりの時給は約125,570円になります。非常に高額な時給であり、詐欺行為の経済的な利益がいかに大きいかがわかります。

被害を防ぐための教訓

積水ハウスの事件から学べる教訓として、不動産取引を行う際には、登記情報の詳細な確認や、第三者の検証が不可欠であることが挙げられます。特に、大規模な取引においては、複数の専門家による書類確認を行うことで、地面師による詐欺を防ぐ手助けとなります。また、取引相手の信用調査や、身分証明書の真偽を確認するための厳重な手続きも必要です。

積水ハウスの事例において、確かに「周辺住民への聞き取り調査を行わなかった」という報道があります。地面師による詐欺行為を防ぐためには、周辺住民や土地の権利に関する関係者に対して確認を行うことが重要です。もし積水ハウスが周辺住民への聞き取り調査を行っていれば、偽造された情報に気付く可能性が高まっていたかもしれません。

このように、実際の不動産取引においては、第三者への確認を怠らないことが地面師の被害を防ぐ上での重要な対策となります。

まとめ:『地面師』と現実の違いを知ろう

Netflixのドラマ『地面師たち』はエンターテインメントとして非常に面白く、視聴者を魅了しますが、現実の地面師とはいくつかの違いがあります。特に、暴力的な行為や殺人はほとんどなく、主に詐欺を行う頭脳犯として活動しています。実際の地面師がどのように行動し、どのように法律で罰せられるのかを知ることで、ドラマと現実の違いを理解することができます。

また、現実の地面師は詐欺で得た資金をマネーロンダリングし、出所後も安定した生活を送ることが多いという点も重要です。ドラマと現実の違いを理解することで、地面師による被害を防ぐための知識を身につけることができます。土地取引を行う際には、慎重な確認と信頼できる業者の選定が必要であり、詐欺被害に遭わないための意識を高めることが求められます。