持ち家か賃貸か?永遠に続く論争の本質

実需不動産

永遠の論争である、自宅は持ち家か賃貸か?。この論争は昔から続いており、今後も続くと考えられています。買うにしろ借りるにしろ、一方的にどちらかのメリットが大きいわけではないため、決着がついていないのです。ここでは、自宅賃貸派の立場から、賃貸を推す理由を説明いたします。

自宅は嗜好品?持ち家と賃貸の価値観の違いを理解しよう

唯一の正解がないからこそ、自宅は持ち家か賃貸かという論争に決着がつかないのです。持ち家にしても賃貸にしても、どちらもメリット・デメリットがあり、かつ、メリット・デメリットを構成する項目は、価値観に基づくものも少なくありません。
だからこそ、自宅は嗜好品と理解すると、この論争に決着を付けることができるのです。
持ち家には「夢」を詰め込むことができます。持ち家であればリフォームや模様替えを自由に行ったり、子供の成長に合わせて柱に傷をつけたりといった「持ち家ならでは」の体験が得られます。賃貸住宅でこんなことをやったら大変なことになります。そもそも家主はリフォームを認めない可能性が高く、仮に無断でリフォームをした場合は、当然、退去時に原状回復が求められます。「自分の家」でしかできないことに価値を見出す人にとっては、持ち家が適しています。
なので、結局のところ、持ち家か賃貸か、という論争は、個人の価値観に基づいて判断すべき、という事になります。

持ち家に潜むリスクと災害への備え

持ち家を持つことにはリスクが伴います。特に災害や社会情勢の変化に備える必要があると指摘しています。例えば、地震などの自然災害が発生した場合や、社会的・経済的な問題が起こって現在の住まいに住み続けられなくなる可能性があります。
一方で、賃貸であれば、制約が少ないため、地震などの自然災害が発生した場合でなくても、引っ越しをしたいと思えば、家主に退去通知を行うことで容易に退去することができます。

  • また、持ち家の場合、自然災害による不動産価値下落リスクもあります。
    2011年3月11日に発生した東日本大震災により、千葉県浦安市は、東日本大震災の際に、市域の約86%が液状化し、約3万7千世帯の約9万6千人が被災しました。家が傾いたり上下水道やガスの管が影響を受けました。
  • 2019年10月12 日、記録的な勢力に発達した台風19号(令和元年東日本台風)による被害が各地で発生。なかでも、川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺に立つタワーマンションの被害は、全国的に注目されました。
  • 2024年1月の能登半島の地震、および9月に発生した集中豪雨による家屋倒壊。ここでの教訓は、リスクは同時期に重ねて襲ってくる可能性もある、ということです。

この3つの事例以外にも自然災害による不動産価値の下落は全国で発生しています。このような状況に遭遇すると、売却が困難になりますし、売却が出来たとしても希望額を大幅に下回る額での取引になるはずです。一方で、住宅ローンはそのまま残ります。つまり、売却代金を住宅ローン返済に回したとしても、債務が存在し続ける、という事が発生するのです。
一方、賃貸であれば、仮に被災した物件に住んでいたとしても、賃貸借契約を解除すれば容易に引っ越しすることができます。つまり、自然災害に対して負うべきリスクが圧倒的に小さいのです。

変動金利と固定金利、住宅ローンのリスクを正しく理解する

住宅ローンを組む際、変動金利と固定金利のどちらを選ぶかについては、時期や金利の上昇傾向、個々人のリスク許容度によって異なります。変動金利は低金利の時期に有利ですが、将来的に金利が上昇するリスクを伴います。固定金利は安定していますが、金利が高めに設定されるため、ローン返済額が多くなる可能性があります。
東京都内、特に都心部の物件価格が高騰しています。この要因の一つとして超低金利による不動産購入のハードルが低くなっている点が挙げられます。不動産業者の中には、顧客に対して「金利が低い今がチャンス」として高額な物件を提案してくる業者もいます。確かに、将来的にも現状の金利が維持されるのであれば良いです。しかし、2024年には潮目が変わり、今後は、金利が上がる可能性が出ています。実際に金利が上昇した場合、ギリギリの収支計算に基づく借り入れを行っている場合、返済額の増大により家計が圧迫され、最悪の場合には住宅を手放さざるを得なくなる可能性があります。
多くの金融機関では、住宅ローンの金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額が変わらないという「5年ルール」があります。加えて、5年経過後の6年目からの毎月の返済額は、今までの返済額に対して125%の金額までしか上げることができないという「125%ルール」が存在しています。だから安心?
そう思っているあなたは、この制度を正しく理解していない可能性があります。5年ルールや125%ルールで毎月の返済額が変わらなかったとしても、住宅ローンを返済期間中に完済する義務は免れません。
5年ルール、125%ルールはその時点で一時的に「急激な変化」を抑制するための仕組みであって、「総返済額を減らす」仕組みではありません。住宅ローンの金利が上昇しても、5年ルールと125%ルールがあれば、急激に毎月の返済額が上昇することはありません。しかし、金利が上がると利息が増えるので、毎月の返済額に占める利息部分の割合が増えていることになります。つまり、本来返済すべき元本が減らないのです。元本を減らさない限り、利息が発生します。

都心部の低利回り物件は賃貸が有利な理由とは?

都心部の物件に住むことで得られる最大のメリットは、その立地の利便性です。例えば、都心部に住むことで通勤時間を大幅に短縮でき、プライベートの時間を充実させることができます。また、都心部には多くの商業施設や公共サービスが集まっており、これらの施設に簡単にアクセスできることは生活の質を向上させます。
多くの人が住みたいと思う場所は、当然、物件価格は高くなります。収益不動産をお持ちの方であれば、利回り志向がおありのはずです。東京都心部の一等地であれば、表面利回り1~3%台という物件が珍しくないことをご存知のことと思います。インカムゲインを重視する不動産賃貸業のオーナーであれば、賃貸事業用としては購入しない物件となります。しかし、自分が賃借人として当該物件を利用する立場として考える場合、表面利回り1~3%台という物件は、お得だと思いませんか?
賃貸の最大の利点の一つは、固定資産税や都市計画税、そして不動産の維持管理に関わる費用を負担しなくて良いことです。これにより、予期せぬ修繕費用や、突発的な税金の増額などのリスクを回避することができます。また、家屋内の設備の故障が発生した場合、賃借人は物件所有者に修理を依頼することができ、自身の負担で修理費用を支払う必要がないため、長期的なコスト管理が容易になります。特に、都心部の高価格物件では固定資産税も高額になるため、こうした費用を負担せずに済むことは大きなメリットとなります。
都心部の物件オーナーは、将来的なキャピタルゲイン(売却益)を期待して購入することが多いですが、ギャンブルの側面があり、リスクは高いと言えます。不動産市場は経済情勢の影響を受けやすく、価格が下がった場合、オーナーは大きな損失を被る可能性があります。また、都心部の物件は高額であるがゆえに、多額のローンを抱えるケースが多く、金利の上昇リスクも存在します。ローン返済が難しくなれば、最終的には物件を手放さざるを得ない状況に追い込まれることも考えられます。このように、都心部の低利回り物件の購入は、不確実な将来の利益を期待して多大なリスクを取ることに他ならず、安定したインカムゲインを求める賃貸事業には適していないと言えます。

結論:賃貸は生活の自由度を高め、リスクを軽減する最適な選択

持ち家は、資産を固定化することになります。持ち家を購入すると、その支払いに多くの資金が固定され、他の資産形成の機会が制限されることがあります。特に、住宅ローン返済は、優先度の高い支払項目となる為、毎月の収入の大部分が固定費となります。加えて、修繕やリフォーム、固定資産税などのコストが定期的に発生し、予期せぬ出費が家計に重くのしかかることがあります。一方、賃貸であれば、これらの維持管理コストや不動産市場の変動による資産価値の低下に悩まされることはなく、その分の資金を資産運用に充てることができます。特に、経済的な不確実性が高まる時代には、こうしたリスクの軽減は非常に重要です。
持ち家は、生活スタイルが固定化されることになります。一方、賃貸であれば、生活の変化に応じて柔軟に投資戦略を見直すことができます。結婚や出産、転職などのライフイベントに応じて、住む場所を自由に変えることができます。例えば、将来的に家族が増えた場合、より広い住居に移る必要があるかもしれません。この自由度は、特に若年層や転職・転勤が多い人々にとって非常に大きな利点となります。
以上の理由から、自宅を買うことよりも賃貸の方が柔軟で経済的に有利な選択となります。特に、将来のライフスタイルの変化に対応するための自由度や、資産運用の選択肢を広げる観点から、賃貸はより現代的な生活に適した選択と考えられます。