悪徳不動産業者に騙されないための粗悪物件の見分け方と対策

賃貸経営の基礎

収益不動産を取得したいと考えている方にとって、投資の成功と失敗を分ける大きなポイントは「良い物件」と「粗悪物件」を正確に見分けることです。悪徳不動産業者は、表面上は魅力的に見える物件を勧めてきますが、その背後には多くのリスクが隠れていることがよくあります。本記事では、接道していない再建築不可物件以外にも存在する、悪徳不動産業者が提案してくる粗悪物件の具体例と、それらを見破るためのコツを解説します。

接道義務を満たさない物件とは?

まず最初に、「接道していない再建築不可物件」について確認しておきましょう。接道義務とは、建物を建てるためにその敷地が一定の幅の道路に接していることを法律で義務付けられていることを指します。日本の建築基準法では、建築物を建てるための敷地は幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接している必要があります。この基準を満たしていない場合、建物を再建築することはできません。この要件を満たさない物件は、資産価値が低く、融資も受けづらいため、流動性も低いという大きなデメリットがあります。

また、修繕やリフォームにも余計な費用が発生する可能性が高いです。接道していない、ということは、工事車両が物件近くまで入れない、ということを意味します。したがって、人の手を使って資材の搬出入を行う必要が生じます。工期も伸びますし、人件費も発生します。さらなるリスクとして、2025年4月施行の建築基準法改正も挙げられます。今までは、リフォームに際して建築確認は不要でした。しかし、4号特例(審査省略制度)が縮小され、木造二階建てや一定規模以上の平屋でも大規模なリフォームを実施する場合は建築確認が必要になります。具体的には、木造2階建てや200㎡以上の平屋の建物について、大規模なリフォームを行う際に建築確認が必要です。接道義務を果たしていない場所にある木造2階建てのリフォームは、建築確認の取得が不可となる可能性があり、リフォームを実施できなくなる可能性もあります。結果、隣接地の所有者に土地を売却する、あるいは隣接地を購入するしか解決方法がなくなります。

さらに、接道していない物件は資産価値の維持が難しいため、将来的に売却を検討する際にも非常に苦労することが予想されます。こうした物件は市場での需要が少ないため、売却価格が期待していた価格まで伸びないことが多いです。そのため、購入後に資産が目減りするリスクが非常に高く、将来的な出口戦略を考える上でも慎重になる必要があります。

耐震性に問題がある物件

次に、耐震性に問題がある物件です。特に1981年5月31日以前に建てられた物件は、旧耐震基準で建設されているため、地震に対する強度が不十分である可能性があります。このような物件は、金融機関からの融資が難しく、ローンが組めないことも多いため、自己資金が必要になるケースが多いです。耐震性に問題があるかどうかを見分けるためには、建物の築年数を確認し、必要であれば耐震診断を依頼することが重要です。また、建築確認申請書や登記簿謄本などを調べることで、建築時期や耐震基準について把握することができます。

不安な時は、市区町村役場の建築指導課や都市計画課に、いつの耐震基準で建築されたのかを確認するのが良いです。1981年~1982年に建てられた建築物は新旧の耐震基準が混在しています。

耐震基準の確認が不十分な物件に投資することは、地震のリスクだけでなく、保険加入の際にも困難が生じる可能性があります。例えば、耐震基準を満たしていない物件は地震保険への加入が拒否されたり、あるいは保険料が割高になることがあります。このため、耐震性の問題を見逃すと、将来的なリスクが増加し、収益性が大きく損なわれることがあります。

水回りや基礎部分に欠陥がある物件

水回りや基礎部分に欠陥がある物件も注意が必要です。水回りの問題は一見すると些細に思えるかもしれませんが、長期的には深刻なダメージに繋がることがあります。例えば、給排水管の老朽化や配管のひび割れがあると、漏水のリスクが高まります。これにより、建物の内部や基礎部分に湿気が溜まり、カビや腐食の原因となることがあります。こうした問題は、修繕費がかさむだけでなく、建物の資産価値を大きく損ねることになります。

基礎部分に関しては、特にひび割れや沈下の兆候がないかを確認することが重要です。基礎に問題がある物件は、建物全体の安全性に直結するため、問題を軽視することはできません。基礎の状態を確認する際には、専門家に依頼してしっかりと調査を行うことが望ましいです。特に地盤が弱いエリアに建つ物件は、地盤沈下による基礎の損傷が発生しやすく、注意が必要です。

また、水回りのリフォームは費用が高額になることが多く、物件の購入後に予想外の出費を招くリスクがあります。そのため、購入前に水回りの状態を十分に確認し、必要であればプロの意見を取り入れることが大切です。

賃貸借契約に問題がある物件

既に賃貸中の収益物件の場合、賃貸借契約の内容に問題があることもよくあります。例えば、表面利回りを高く見せるために相場よりも高い賃料が設定されていることがあります。この場合、物件引き渡しの直後に賃借人が退去する可能性が高いといえます。つまり、賃借人は売却時に高利回り物件であることを示すための一時的な入居者なのです。

当然ですが、周辺相場より高額の賃料設定をしているわけですから、現行の賃料では、客付けできません。結果として空室が長期化する可能性や、想定した収益が得られなくなる可能性が高くなります。

また、賃貸借契約の内容が不適切である場合、賃借人とのトラブルが発生し、収益が安定しないリスクもあります。例えば、契約内容に賃借人に不利な条件が含まれていたり、または更新料や修繕費用の負担が不明確な場合、後々のトラブルに発展しやすくなります。さらに、賃貸借契約の締結時に適切な審査が行われていない場合、支払い能力に問題のある賃借人が入居してしまうリスクもあります。その結果、家賃の滞納や契約解除に至る可能性があり、収益が不安定になります。

また、賃貸借契約の内容が曖昧であったり、賃借人に不利な契約条項があると、賃借人が不満を持ち、退去を希望することが増えるリスクもあります。特に、更新料の設定や修繕費用の負担割合について不明確な場合、賃借人との信頼関係が崩れやすくなり、収益性が低下する恐れがあります。契約内容をしっかりと確認し、必要であれば専門の法律家に相談することをおすすめします。また、入居者審査を厳格に行い、信頼できる賃借人を選ぶことも重要です。安定した収益を得るためには、契約の透明性と賃借人との信頼関係が欠かせません。

立地条件に問題がある物件

立地条件も収益物件において非常に重要です。交通アクセスや周辺環境が悪く、人口減少が進んでいるエリアにある物件は、空室リスクが高く、将来的な資産価値の下落が懸念されます。物件の周辺環境や今後の発展性については、自分自身で現地を訪れて確認したり、自治体の計画を調べたりすることで判断することが重要です。

特に人口減少が進んでいる地域では、将来的な賃貸需要が不安定になるリスクが高いです。そのため、周辺の人口動向や将来の都市開発計画などを事前に確認し、賃貸需要の安定性や競争物件の有無、物件の維持管理にかかる費用などを総合的に評価して、物件が安定した収益をもたらすかどうかを判断することが重要です。また、周辺に競合する物件が多すぎるエリアも、賃貸需要が分散し、空室リスクが増える可能性があるため注意が必要です。

特定の企業や大学に依存している地域も立地条件に問題があると言えます。例えば、青山学院大学の厚木キャンパス撤退、北海道医療大学の当別町から北広島市への移転などが挙げられます。移転後は一気に賃貸需要が激減します。

管理状態が悪い物件

物件の管理状態も、投資の成功を左右します。共用部分の清掃が行き届いていない物件や、管理会社の対応が悪い物件は、入居者の満足度が低く、結果として空室率が高まる傾向にあります。購入前に管理会社の評判や管理状況を確認することで、管理状態が悪い物件を避けることができます。また、入居者からのクレーム対応が適切に行われているかどうかも確認しておくと良いでしょう。

管理会社の質が低い場合、共用部分の破損が放置されたり、清掃が行き届いていなかったりすることで、物件全体の価値が下がります。特に賃貸物件においては、共用部分の管理が悪いと入居者が不満を感じ、退去率が上昇する要因になります。そのため、管理会社の選定は非常に重要であり、信頼できる会社に任せることで、長期的な物件価値の維持が可能となります。

また、管理状態が悪い物件では、賃貸契約の更新率が低下することもあります。入居者は生活環境が快適でないと感じた場合、更新せずに他の物件へ移る可能性が高くなります。したがって、物件管理の質を見極め、適切な管理体制を確保することが収益性の向上につながります。

粗悪物件を見破るための具体的なチェックポイント

粗悪物件を見破るためには、以下のチェックポイントを参考にしてください。

  1. 接道義務の確認:接道しているかどうかを確認し、再建築の可否をチェック。
  2. 耐震性の確認:築年数や耐震診断の有無、修繕履歴を確認。
  3. 水回り・基礎の状態:漏水やひび割れの有無をチェック。
  4. 賃貸借契約の内容確認:賃料が適正か、契約内容に問題がないかを確認。
  5. 立地条件の確認:交通アクセスや周辺環境を確認し、将来的なリスクを評価。
  6. 管理状況の確認:管理会社の評判や共用部分の管理状態をチェック。

これらのチェックポイントをしっかりと確認することで、粗悪物件を避け、より安定した収益を得ることが可能になります。

専門家の協力を得ることが重要

粗悪物件を見破るためには、専門家の協力を得ることが非常に重要です。建物の構造や耐震性については建築士に相談し、契約内容に関しては弁護士に確認してもらうことで、リスクを最小限に抑えることができます。具体的には、契約の法的リスクや違法条項の有無、特約条項の内容などを確認してもらうことが重要です。ただし、多くの一般の方にとって弁護士との接点は少ないため、どのように相談すれば良いか分からないこともあるでしょう。この場合は、各地域の弁護士会が提供している無料相談(初回相談が無料の場合が多い)や、自治体が実施している法律相談を利用することが有効です。これにより、弁護士のアドバイスを受ける際のハードルが下がり、具体的な契約内容について気軽に相談することができます。また、インターネットでの弁護士検索サービスを活用して、自分に合った弁護士を探すことも可能です。また、複数の不動産業者から意見を聞くことで、より客観的な判断ができるようになります。

また、税理士に相談して物件の税務上のリスクを把握することも重要です。サラリーマンの多くは通常、確定申告の必要がないため税理士との接点が少ないですが、税理士会が実施している無料相談(予約が必要な場合や相談時間に制限があることが多い)や、自治体が提供する税務相談などを利用することで、税理士との接点を見いだすことが可能です。収益物件に関しては、賃料収入に対する税金や将来的な売却時の税金など、多くの税務上の考慮点があります。これらを事前に理解しておくことで、予想外の費用負担を避けることができます。

まとめ:慎重なリサーチと専門家の助言が鍵

収益物件の購入にはリスクがつきものですが、適切なリサーチと専門家の助言を得ることで、そのリスクを大幅に減らすことが可能です。悪徳業者に騙されないためには、自分自身で情報を収集し、専門家の知見を活用することが欠かせません。本記事で紹介したチェックポイントを活用して、安全で収益性の高い不動産投資を目指してください。