収益物件の最適な保有期間とは?長期と短期のメリット・デメリット

賃貸経営の基礎

収益不動産をどのくらいの期間保有すべきかは、多くの投資家にとって大きな悩みです。この記事では、売却時の税率、キャッシュフロー、物件の状態、そして市場の動向など、収益物件の保有期間に影響を与えるさまざまな要素を詳しく解説します。 さらに、金融機関の融資期間と法定耐用年数に関する考え方についても解説します。さらに、投資家が考慮すべきその他の重要なポイントについても触れていきます。

短期譲渡課税 vs 長期譲渡課税:収益物件の売却における税負担の違い

収益物件を売却する際、税制上の優遇措置が保有期間によって異なります。保有期間が5年未満の場合、39.63%の短期譲渡課税が適用されます。一方、5年以上保有した場合には売却益に対して20.315%の長期譲渡課税が適用されます。

譲渡所得の区分は、不動産を売却した年の1月1日の時点で、その不動産を何年所有していたかで決まります。そのため、譲渡が1月であっても12月であっても、その年の1月1日時点までの経過年数が所有期間となります。分かりやすく換言すれば、長期譲渡課税を適用するためには該当不動産を所有してから1月1日を6回以上迎える必要がある、という事です。これなら簡単に課税区分が認識できますね。

収益物件のキャッシュフローと資産価値の成長を見極めるポイント

物件の保有期間を決める判断材料は、地域の発展やインフラの整備状況によって、大きく左右されます。これらの要素は、賃貸需要に直結します。賃貸不動産経営において賃貸需要は最も重要な要素です。賃貸需要を失くして賃貸客付けや賃料計上はありえません。賃貸付けが難しくなる地域の物件は、当然、下落傾向になります。一方、東京都心部の様に、人口が流入し続ける地域であれば、賃貸付けの問題は発生しないと推測されます。従って、今後の人口動静、およびそれを左右する各種の要素について注視することが肝要です。

修繕費と管理コストの影響:収益物件の保有期間を決定する際の注意点

物件の経年劣化による修繕費や管理コストの増加も、保有期間を決める際の考慮ポイントです。建物の古さによっては、修繕が頻繁に必要となり、そのコストがキャッシュフローを圧迫する可能性があります。どのような建物であっても一定期間ごとに大規模修繕が必要です。区分マンションであれば、大規模修繕の執行は、管理組合が判断します。しかし、戸建て物件、一棟物件であれば、オーナーが自ら判断しなければなりません。物件規模にもよりますが、大規模修繕は多額の費用が発生します。従って、大規模修繕を行う、行わないの判断は極めて大きな判断となります。大規模修繕を行って、物件価値の維持向上により賃料の維持向上ができるのであれば、大規模修繕を行うメリットはありそうです。しかし、大規模修繕に投じる費用を回収できる見込みが立たない場合は、物件を売却するのがよさそうです。

法定耐用年数と融資期間の関係:収益物件の保有戦略に影響する要因

金融機関は、法定耐用年数に応じた融資期間を設定することが多いため、物件の保有期間が長くなると売却が難しくなる可能性が高くなります。

法定耐用年数は建物の構造によって異なります。例えば、木造の場合は法定耐用年数が22年と短く、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合は47年と比較的長いです。築30年の物件の場合、木造であれば法定耐用年数越えとなりますし、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合は、残存17年となります。法定耐用年数を融資期間とする金融機関の場合、築30年の木造物件は融資対象外、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合は融資期間17年となります。融資期間が短いと、月額の返済額が大きくなります。つまり、キャッシュフローの悪化が発生するため、買い手がつきにくくなるのです。

もちろん、築古物件は、一切融資対象外、という訳ではありません。三井住友L&Fのようなノンバンクは、法定耐用年数超えの物件に対しても融資を行いますが、銀行融資にくらべて融資条件が悪くなる傾向があります。

 

市場動向を見極めて収益物件を売却する最適なタイミングを見つけよう

市場の動向も、保有期間を決める重要な要素です。不動産市場は景気変動や、金利に左右されます。市場が高騰しているタイミングで売却することができれば、より高い売却益を得ることができます。逆に、市場が低迷している時期には、無理に売却せずに市場が回復するのを待つことが得策です。

但し、株式などの金融商品とは異なり、不動産は相対取引となります。つまり、買い手が出てこない限り、売却が出来ません。最終的には、売主と買主がお互いに価格合意出来ない限り、売却が出来ません。必ずしも希望価格で売却が出来るわけではありません。

とはいえ、不動産売却に関しては、地域の不動産需要や人口動態の変化、経済の発展状況など、多種多彩な要素が物件の価値に影響を与えるため、常に市場の最新情報を把握しておくことが求められます。そのため、地域ごとの特性を理解し、市場のトレンドを見極めることが必要です。

収益物件の保有期間を決める際のポイント:投資目標に合った戦略とは

最終的には、物件の保有期間は投資家自身の保有目的によって異なります。短期的なキャピタルゲインを狙うのか、長期的な賃料収入を重視するのかによって、最適な保有期間は変わります。また、税負担や修繕コスト、市場動向など、複数の要素を総合的に判断して決めることが重要です。さらに、自分のライフイベントや資金計画も保有期間に影響を与えるため、長期的な視点での計画が必要です。投資家は自身のリスク許容度や、将来的に必要となる資金の使い道を見据え、最も適した保有期間を選定することが求められます。自分の投資スタイルと目標に合わせて、適切な保有期間を設定しましょう。また、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることで、より確かな判断が可能になります。