勉強しない我が子にイライラ 子供の成長に効果的な接し方とは?

生き方・自己研鑽

マンガ「ドラえもん」で、「のび太、勉強しなさい」、「のび太、宿題は?」などというシーンをよく目にしますね。似たような言葉をお子様に投げかけた経験をもつ親御さんは少なからずいらっしゃるかと思います。でも、イライラしながら「勉強しなさい!」とか、「宿題したの?」という類の言葉の投げかけは、効果があるのでしょうか?そして、このような言葉を投げかけなくても済む環境を作るにはどうしたらいいのでしょうか?子供の成長を促す効果的な接し方を考えてみましょう。

「勉強しなさい」では、効果なし!コミュニケーションが大切

欧米では心理学者による研究により、家庭の役割の重要性が学術論文にて証明されています。例えば、子どもレジリエンス(※1)を高める要素として、「時間の使い方や時間の管理」、「宿題を援助すること(親が宿題を代行することではありません。宿題を完了させるために適切な指導をすることです)、「学校について親子で話し合うこと」といった親子のコミュニケーションが有効であることが証明されています。また、年齢に応じて効果的なかかわり方は変わっていきます。発達段階に応じた関わりを意識することの重要性を指摘しています。子どもが小学生低学年の場合、親の全般的で積極的な関わりが適切ですが、子どもの成長とともに、時間の管理や学習スキルを教えるといった自立を促すような関わりが効果的です。

※1:レジリエンスとは、困難や脅威に直面している状況に対して、「うまく適応できる能力」「うまく適応していく過程」「適応した結果」を意味します。

欧米の研究結果は、日本人の大学生を対象とした調査結果から、日本人でも同様のことが言えそうなことがわかってきました。調査は、関東圏に位置する国立大学1校と私立の総合大学1校に通う大学生561名を対象しています。質問は,①学習支援をするために親が行っていたこと,②直接的でなくても,親や家庭の様子で勉強しやすくなったこと,③勉強に関する親の言葉かけで嬉しかったもの,嫌だったもの,その理由です。その結果、「親子関係の良好さ」や、「子ども学業への期待や関心」の有無が子どものやる気に大きく左右することが証明されました。

具体的な要素は以下の通りです。

  • 親子関係
    1. 親子関係が良好だった
    2. 家庭環境に恵まれていた
    3. 親とよく会話をした
  • 子ども学業への期待や関心
    1. 親が自分の学業・個人的成長に関心を示していた。
    2. 学校での成績や課題の達成に親が期待していた。

つまり、子どもの成長段階でも、「勉強しなさい」という一方的なコミュニケーションは効果がなく、日頃から、子どもに対して期待や関心をもって、双方向のコミュニケーションをとる事こそが、子どもが意欲をもって学習するマインドセットに効果がある、といえるのです。

「勉強しなさい」に代わるコミュニケーションとは

勉強しなさい!といいたくなるのは、何故でしょうか?おそらく、以下のような不安や心配事が考えられますね。

  • だらだらテレビをみたり、ゲームばかりして、自分で時間のコントロールができていない。
  • 早く宿題をしないと、夜寝るのが遅くなり、よく朝起きられない。
  • 宿題が難しすぎて、お手上げ状態なのか?

だらだらテレビを見ている状態・ゲームをやっている状態の子どもに対して、「いつまでテレビを見ているんだ!」「なんでゲームばっかりやってるの?」という詰問をすると、子どもは責められていると感じ、心を閉ざしたり、「うざいなぁ~」という反抗的な返事をするかもしれません。つまり、全く効果がないコミュニケーションになります。

コミュニケーションと取り方として、I (アイ)メッセージと、You(ユウ)メッセージという2種類があります。同じことを伝える場合、圧倒的に相手に受け入れられるのが、I (アイ)メッセージというコミュニケーションスタイルです。

You メッセージは、You(あなた)を主体とするコミュニケーションで、つまり、「何故、勉強しないの」、「宿題をしなさい」というスタイルです。文字にしても、やはりきつい印象を受けますよね。一方、I (アイ)メッセージは、I(私)を主体とするコミュニケーションスタイルです。例えば、「最近帰ってくるとすぐにテレビの前で転がってずっとテレビ見ているよね。宿題するのが遅くなって寝る時間が遅くなるし心配なんだ。」という感じです。その上で、テレビを見る時間は、親子で話し合って時間制限を設けるようにしましょう。回りくどいのでなかなか実行するのは難しいのですが、急がば回れです。I (アイ)メッセージの方が、確実に子どもは受け入れやすいのです。ゲームやネットサーフィンに費やす時間についても同じアプローチが有効です。いずれにしても、頭ごなしに時間制限を掛けようとしても、うまくいかないことが多いのです。

加えて、親子で良質な時間を一緒に過ごす機会を設けると、単に子供の時間の使い方の改善のみならず、良好な親子関係を築くきっかけとなります。例えば、科学館やキャンプなど子どもが興味を持つような活動を一緒に取り組むことがお勧めです。都市部に住むご家族であれば、親子で農業体験に参加して汗を流すことも一案です。

良好な親子関係がもたらす様々な効果は?

調査では、子ども発達について、信頼感、自立性、自主性、勤勉性(学ぶことが楽しいという感覚や学習習慣を育むことを意味)、同一性、親密性の6項目の切り口で分析しました。その結果、良好な親子関係は、これら6項目のすべてで、有意差があることが証明できました。つまり、良好な親子関係は、信頼感、自立性、自主性、勤勉性、同一性、親密性のいずれに対しても、良好な影響を導くのです。

なぜ、良好な親子関係が、これらの項目で良好な結果を導くのでしょうか?だらだらした生活を送っている子どもをみると、つい、いろいろ言いたくなるのは親としてごく自然な感情です。大人の目からすると、だらだらした生活の延長線上にある結果が分かり、心配だからですね。しかし、「宿題が終わってからじゃないと、テレビを見てはダメ」などという、一方的なコミュニケーションをとると、子どもは思考停止します。つまり、自分で考えたり、計画を立てたり、行動することができなくなってしまうのです。

親子に良好な関係があり、日々適切なコミュケーションができている場合、子どもの意思を尊重し、子ども自身が出した方法を応援しながら、子ども自身に考えさせることができるのです。それ故、必然的に、信頼感、自立性、自主性、勤勉性、同一性、親密性が醸成されるのです。

良好な親子関係を築くための理想的な子どもの接し方とは?

親としては,子どもの将来に向けて適度な期待を持ち,世の中にあるいろいろなおもしろいことを子どもに提示し、子どもが努力したことに目を向け、子どもが危ないことや体によくないことをしようとするときは制限・管理的に関わり、子どものよいところをみつけて肯定的に関わること、子どもが小さいときは積極的に関わり、大きくなってきたら適度に手を放し自立に向けてサポートすること、これらのことが、子どもの家庭での過ごし方として、大切な心掛けと言えそうです

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参考:本記事は、下記の学術論文を基に作成しました。

家庭学留に関する学校心理学的研究
一家庭のカリキュラム尺度の作成と信頼性・妥当性の検討一 筑波大学心理学研究