JAL副業解禁、ANA社外出向、みずほ銀行週休3日制にみる雇用政策の変化

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新卒就職先人気ランキング上位に君臨し「勝ち組」と言われてきた大企業サラリーマンの雇用環境が急激に変化している。終身雇用制度の崩壊、という言葉は、これまでにも何度も言われていることではあるが、就職先人気ランキング上位の大企業で大規模に終身雇用制度の崩壊の姿が露見したのは、コロナ禍の景気低迷になってからである。この変化は、まだ、通過点に過ぎない。更なる変化が見込まれる。

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JAL副業解禁、ANA社外出向にみる雇用政策の変化

コロナ禍による未曽有の航空需要の低迷。海外では、タイ国際航空など、大小を問わず航空会社の倒産が相次いでいる。また、倒産には至らなものの、人員削減を検討する会社も多数存在する。米アメリカン航空やユナイテッド航空は政府支援の延長がなければ、合計3万人を超える人員削減に踏み切る方針だ。国内でも、エアアジアジャパン、ジェットスターなど、事業撤退や希望退職を募る動きがでてきた。JAL(日本航空)、ANA(全日空)という、国内大手航空会社といえども、無関係ではない。

2020年10月7日のJALの発表では、11月以降全ての都道府県ごとに客室乗務員を配置し、現地での観光振興などに取り組むとの事。配置転換ではなく、搭乗業務との兼業で約千人を社内で公募する。それ故、直接的な賃金カットや人員削減には、まだ、至っていない。コロナ禍よる大幅な減便で勤務時間が減った人材の新たな活躍の場を捻出している。詳細は検討中との事だが、観光業者を対象に有償でもてなし方といった接遇講座などを検討している。接遇講座は、これまでも、同社が関連会社で行ってきた事業であるが、既存の事業とは対象が観光振興に特化していることが大きな違いの様である。また、今後の航空事業の掘り起こし策として、独自に観光資源の調査をする案もあるようだ。従って、JALは、まだ、複業解禁には至っていない。

一方、2020年10月9日のANAの発表によれば、同社では、冬のボーナス支給を凍結し、正社員の年収が3割超下がるとの事。また、同時に、社員の副業範囲を大幅に広げる方針である。従業員が勤務以外の時間を活用して、ほかの会社とも雇用契約を結べるようにする。ANAはこれまで、勤務時間外に家庭教師をするなど個人事業主の立場での副業は認めてきたが、あまり浸透していなかった。今回の案ではANAで働きつつ、ほかの会社ともアルバイトやパートなどとして雇用契約を結べる。キャリアアップに向けた活動に使う無給の休業制度も最大2年設ける。

2020年7月28日、IATA(国際航空運送協会)は、世界の航空需要がコロナ禍の影響を受ける前の水準に戻るのは、2024年になるとの見通しを示した。しかし、観光需要はともかくビジネス需要が、コロナ禍以前に戻るかは懐疑的である。リモートワークや、Zoomなどを用いたWeb 会議が根付いたことが背景にある。

みずほにみる雇用政策の変化

金融業界では、低金利の長期化で収益が悪化しているみずほフィナンシャルグループが、新しい雇用対策を打ちだした。通常の勤務形態である週休2日に加え、週休3日、週休4日といった雇用形態を作り、人員削減を先延ばしにしながら人件費の削減を実現しようとしている。資格の取得や専門知識を深める時間に充て、それぞれの業務とセカンドキャリアの充実につなげてもらう狙いがある。

銀行や証券、信託銀行などに勤める計4万5千人程度から希望者を募る。週休3日以上の制度を本格的に導入するのは3メガバンクで初めてだ。増えた休日を生かし、資格学校や大学院、ビジネススクールで知識やスキルを磨くことを想定している。利用にあたっては土日に加え、毎週決まった曜日を休みとする。給与は週休3日だと従来の8割、週休4日の場合には6割まで減る。しかし、減給した上で、増えた休日の利用方法について制約をつけることに対して、果たして労働組合や従業員は納得するのであろうか。

コロナ禍は、複業解禁の幕開けとなるか?

3社3様の雇用対策。ANAの給与と人員の削減は、従業員のモチベーションを低下させ、優秀な人材の流出をもたらすリスクが考えられる。JALの配置転換による雇用の維持は、短期には、有効な施策であるが、見通しが見えないままなし崩し的に恒久化すれば、従業員のモチベーションを下げることに繋がる。そして、みずほのような勤務日数削減による雇用調整は、副業を認めれば、モチベーションに維持は可能である。しかし、単に労働時間を減少させるだけなら、従業員の収入減につながり、マイナスの影響が大きい。

雇用対策の違いはあるが、今回事例として挙げた3社から推測できる共通する事実は、一つの収入源だけにたよる働き方は極めてリスクが高い、ということである。これは、勤務先企業の規模にかかわらず例外がない。リスクの高さに気づいたサラリーマンが、自己の家計維持のために、複業を検討するのはごく自然な流れである。