燃え尽き症候群になりにくい学校の先生はどんな先生?

生き方・自己研鑽

小学校、中学校、高等学校の先生を見ると、毎日元気はつらつな先生もいれば、今にも燃え尽き症候群にかかりそうな元気のない先生もいますよね。そして、実際に燃え尽きてしまって休職している先生もいらっしゃいますね。着任当初から燃え尽き症候群にかかっている先生はいません。学校勤務の過程で燃え尽き症候群になっていきます。燃え尽きない元気はつらつ先生と、燃え尽き症候群になる先生は、何が違うのでしょうか?

日本の学校の先生には燃え尽き症候群になりやすい要素が多い?

日本の学校の先生の労働環境は、年々厳しいものになっています。従来は存在しなかった新しい施策、たとえば、特別支援教育、小学校での英語導入、キャリア教育、いじめ防止対策など新しい政策が加わっています。新しい施策は時代に応じたものであったり、社会状況の変化に応じたものであり、必要不可欠なものです。

一方で、増加した業務量を新たな人員を投入して、教員一人当たりの業務量の増加を回避する施策はとられていません。1学級当たりの児童数・生徒数は、従来通りで変更ない為、必然的に1教員当たりの負担は増加しています。また担任の先生以外で、児童・生徒や家族をサポートする専門家の配置も国際的に比較すると日本は極めて少ない状況です。従って、新しい施策が投入されるたびに始まるたびに,先生の業務が増えていきます。

また、一時期、流行語ともなったモンスターぺアレンツといわれる学校に対して過剰な要求する保護者対応の問題も残存しています。残念ながら、組織としての対応体制が脆弱なままであり、保護者対応も担任の役割となっている実態があります。

燃え尽き症候群になりにくい学校の先生は、ある工夫をしている!

燃え尽き症候群になりにくい先生は、児童・生徒の家庭と良い関係を築くために様々な工夫をしていることが、筑波大学・飯田順子准教授の研究グループの調査で明らかになりました。調査は,現役の教員254名(男性126名,女性122名,未回答6名)を対象に行われました。燃え尽き症候群とは、達成感を感じられなくなる「個人的達成感の低下」、人と接することが苦になり機械的に対応する傾向が強くなる「脱人格化」、心身が極度に疲労した状態を指す「情緒的消耗感」の3つの要素からなります。

この調査によると、家庭はしっかり家庭の役割を果たし学校に協力するものという伝統的な価値観を持っていたり、家庭との連携に対して苦手意識が強い先生は、燃え尽き症候群になりやすい傾向があることがわかりました。一方、家庭との連携の重要性を認識して、児童・生徒の家庭と積極的にコミュニケーションをとる先生程、燃え尽き症候群になりにくいことがわかりました。保護者会や個人面談に積極的に臨んだり、保護者向けの学級通信の発行などでコミュニケーションをとることは、業務量増加に直結するのですが、燃え尽き症候群になりにくいことが証明されたのです。

つまり、家庭と良い関係を築くためいろいろな工夫をしている先生ほど元気。一方で、家庭はしっかり家庭の役割を果たし学校に協力するものという伝統的な価値観をもっている先生は燃え尽きやすい、という事象が調査で明らかになったのです。

 

欧米の学校の先生には燃え尽き症候群になりにくい土壌がある

欧米では、家庭と学校のパートナーシップは,子どもが学校でうまくやっていくための鍵と、学校と認識されている為、学校と家庭のパートナーシップに関する研究が盛んにおこなわれています。欧米社会には多種多様な人種が存在する為、日本以上に多種多様な形の家族があります。その中には、子どもの教育に価値をおいていない家族や、教育を大事と思っていても子どもの勉強のサポートの仕方がわからない家族などたくさんあります。そのため,アメリカでは子どもの学校生活をサポートするために置かれている専門職のスクールカウンセラーやスクールサイコロジストが、家庭と学校のパートナーシップを築くために、専門家の立場から、家族を教育に参画できるよう応援する活動が強く推奨されています。子どもの勉強をどのように応援したら良いかという勉強会が、日中働いている保護者のために夜,開催されています。そこでは、コーヒーやドーナツなどが提供されることもあります。こうしたことから,「家庭と学校のパートナーシップに関する研究」というテーマは,スクールカウンセラーやスクールサイコロジストの専門領域の重要な研究テーマの1つとなっています。

一方、日本では、家庭と学校のパートナーシップに関する研究はあまり行われていません。このテーマに限らず,全般的に心理学の研究は欧米が盛んで,日本をはじめアジア諸国では少ない現状があります。よりよい社会生活を目指すため、様々な分野で心理学的なアプローチが、日本では必要と思われます。