森喜朗発言オリンピック会長発言にみる日本の女性差別、女性活躍が進まない原因

選択的夫婦別姓

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言で、森会長の辞任を求める声が高まっています。まずは、事実関係を確認しましょう。2月3日、東京都内で開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会の場で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。女性は競争意識が強いから、誰か一人発言すると自分も言わないといけないと思うのだろう」との発言をしました。もちろん、このような発言は容認できるものではありません。辞任を求める署名も始まっているようです。ただ、森氏が辞任したら本当に問題は解決するのでしょうか?日本において、同種の問題の再発の可能性はないのでしょうか?日本における女性活躍が進まない理由が、この発言に見え隠れしています。

ジェンダーギャップ指数とは何? 日本は121位

世界経済フォーラム(World Economic Forum)は、毎年、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を発表しています。この指数は、経済、政治、教育、健康の4分野を測定対象としています。スコアは、0~1で表され、0が完全不平等、1が完全平等を示しています。この指数によれば、2020年の日本の順位は153か国中121位でした。

世界的に見ても低順位に位置していますが、アジア域内で見た場合、最下位に位置づけられていることが分かります。

出典:内閣府男女共同参画局 https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202003/202003_07.html

全対象国の順位をご覧になりたい方は、

https://www.weforum.org/reports/gender-gap-2020-report-100-years-pay-equality をご覧ください。

ジェンダーギャップ指数では、特にどの分野が低順位なの?

もう少し、細かく見てみましょう、経済、政治、教育、健康の4つの分野ごとの日本の順位は、以下の通りです。4つの分野では、政治面での位置づけが著しく低いことが分かります。

ところで、政治とは何でしょうか?広辞苑では、「人間集団における秩序の形成と解体をめぐって、人が他者に対して、また他者と共に行う営み。権力・政策・支配・自治にかかわる現象。」と定義しています。 大辞泉では「1. 主権者が、領土・人民を治めること。2. ある社会の対立や利害を調整して社会全体を統合するとともに、社会の意思決定を行い、これを実現する作用。」と定義されています。したがって、政治における男女格差が大きい時に発生する事象は、権力が男性に偏ったり、社会の意思決定には男性の意見しか反映されない、ということになります。

身近なところに置き換えてみると、認識しやすいですね。政治の場面に限らず、現場では女性の活躍しているものの、組織の意思決定の場になると女性が少ないという光景を見かけないでしょうか?政治活動、企業活動、地域の自治会、学校のPTAなど、挙げたらきりがありません。スポーツの世界も同じような状態にあります。現場である女性アスリートの数は多く、活躍する環境は整っています。しかし、組織の意思決定の場である、JOC 日本オリンピック委員会の役員25名の内、女性は5名、つまり女性比率は20%に留まっています。これでは、当然ですが、女性の意見は反映されにくいですね。

池上彰ジャーナリスト・東京工業大学特命教授

「女性がたくさん入っている入っている理事会は時間がかかる」という発言から、男性ばかりの会議は発言する人も少なく、幹部の方針に異議を唱える人もないまま物事が進んでいく実情を問わず語りに白状したように思えます。だからこそ女性が入って多様化を進めることの重要性を教えてくれたように思います。

気付いた人から周りの人に意識変化を促そう

森氏の発言は、極端で表面化しやすいため、非常に大きく注目されています。しかし、森氏が退けば解決するという問題ではなない気がします。仮に森氏が東京五輪・パラリンピック組織委員会長を辞任したとしても、社会に、男女格差を容認する土壌がある限り、異なる場面で同様の事例が再発する可能性があります。森氏の話は遠いところで起こっているし、自分に何ができるの?と疑問に思った方は、ご自身の身近で発生している事象を観察してみてください。男女格差を助長する事象は発生していないでしょうか?例えば、以下のような場面で男女の差はないでしょうか?

  • 働き方:男性の方が給与が高い傾向。男性の方が職位が高い傾向。男性の方が勤務時間が長い傾向。
  • 家事・育児の分担:女性の方が家事分担割合が高い傾向。小学校の保護者会に出席するのは母親が多い傾向。小児科に子供をつれて行くのは母親が多い傾向。
  • 町内会・商店街の会議:ほとんどの組織で男性で多い傾向
  • 結婚後の姓の選択:男性の姓を選択する割合が9割超。本人の意思に関わらず、婚姻に伴う改姓の負担を負うのは女性が圧倒的に多い。

このような身近な問題を一つずつ解消しないと、女性が活躍する社会の実現にはたどり着かないと思いませんか?そして、このような問題を解消するためには、問題の存在に気づいた人は、まずは自分の行動を変えてみませんか。そして、皆さんの周りにいる人達に、問題の存在を認識させることから始めませんか。問題意識がなければ、そもそも問題解決する必要性が生じません。また、問題に気づいていても、黙っていては、現状を黙認していることとなり、問題は何も解決しません。

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