【テレワーク・在宅勤務】地方移住・田舎暮らしで生活費は下がる? 

お金の話

コロナをきっかけに在宅勤務を導入する企業の動きがあります。いままで、想定していなかった在宅勤務。実際にやってみると、「めちゃくちゃいい!最高!ずっと在宅勤務にしたい!」という感想を持つ方も中にはいらっしゃいますよね。完全リモートワークOK、あるいは、出社が精々月1回程度であれば、地方移住・田舎暮らしが、頭に浮かんできます。とはいえ、地方移住・田舎暮らしは、現実的なのでしょうか?

地方移住・田舎暮らしで得られるメリット

確かに、地方移住をすると、都会にはない様々なメリットがあります。物理的な側面は想像しやすいですね。およそ、以下のようなメリットを求めて、地方移住・田舎暮らしにあこがれるのではないでしょうか?

  • 広い家に住むことができる上に、家賃も安くなる。
  • 空き家を、激安で購入することができる。
  • 満員電車に乗る苦痛な通勤時間が無くなる。
  • 大自然に囲まれて、新鮮な空気を味わうことができる。
  • 近所の農家さんから、野菜を分けてもらえる。

行政も補助を行い、積極的に移住を支援しています。

テレワークで地方移住、最大100万円補助 政府21年度から - 日本経済新聞
政府は2021年度から、テレワークで東京の仕事を続けつつ地方に移住した人に最大100万円を交付する。地方でIT(情報技術)関連の事業を立ち上げた場合は最大300万円とする。新型コロナウイルスの感染拡大で高まった働き方の変化を踏まえ、地方の活性化につなげる。21年度予算の概算要求に地方創生推進交付金として1000億円を計...

また、移住を受け入れている多数の地方自治体も、魅力的な支援制度を設けています。「住んでみたい/興味のある地域名」+「移住」+「支援」などというキーワードで検索してみてください。日本全国で、移住の受け入れを行っていることが分かります。キラキラ感満載のサイトですね。果たして、キラキラした生活を手に入れることができるのでしょうか? このサイトでは、地方移住・田舎暮らしについて、お金の側面から検討してみます。

事例1:静岡県南伊豆町

事例2:長野県

地方移住・田舎くらしは意外にお金がかかる

地方移住・田舎くらし、確かに広い家に住むことができる上に、家賃も安くなります。しかし、もう少し広い目で、支出を把握しておく必要がありそうです。移住に際して、本来は、以下のような項目についても考慮しておく必要があります。なお、地域差があります。必ずしも、すべての田舎で以下のような点があるわけではありません。しかし、遭遇する可能性を認識しておくことは重要です。

住宅の維持・管理費

現在、空き家になっている住居で快適に過ごせるようにするためには、何らかの修繕/改築が必要になることが想定されます。従って、安い古民家を見つけたとしても、追加費用が発生することを認識する必要があります。

仮に、現時点で修繕/改築が必要ないとしても、数年に1度は何らかの修繕が必要になります。建物の場所によっては、湿気で痛む速度が速いことも想定されます。海沿いの立地では、塩害も気になります。職人さんに来てもらいにくい場所・建築資材の搬入に難のある場所での作業依頼は、どうしても費用が高くなりがちです。

自動車関連の諸経費、ガソリン代

東京などの都市部に住んでいる人には、自家用車を所有していない人もいます。しかし、地方における移動手段は自家用車になります。しかも一家に一台ではなく、大人一人一台を用意する必要があります。自家用車を複数所有すれば、当然、車両購入費、税金、保険料などが、すべて複数倍に膨れ上がります。

移動手段が自家用車になると、気になるのがガソリン価格です。都心部に住んでいると、車を持っていたとしても走行距離が短く、また、ガソリンスタンド間の価格競争があるため、家計へのインパクトは大きくありません。しかし、田舎では、ガソリンスタンドが少ないため価格競争が働きません。また、移動距離も長くなります。従って、家計へのインパクトが大きくなります。

資料は少々古いですが、総務省統計局が発行している年間ガソリン購入量の統計です。都市部より田舎の方がガソリン消費量が多くなることが分かります。

ガス、灯油代

都市部を離れると都市ガスがありません。その為、プロパンガスや灯油を使用することになります。プロパンガスは、都市ガスのおよそ2倍の費用が発生します。また、冬季の暖房には、灯油も併用することになります。簡単に試算するのであれば、現在都市部で支払っているガス代の2倍以上の費用を見積もるのが無難です。

国民健康保険料

フリーランス、自営業の人が対象となります。会社勤務の人は、国民健康保険へ加入しないので読み飛ばしてください。国民健康保険料は、お住まいの自治体の財政状況によって大きく保険料が変わります。現在お住まいの自治体の保険料率と、移住先として検討している自治体の保険料率を予め比較してください。

加えて、田舎の医療体制は、都市部程充実していないことも想定されます。診療科によっては、隣町まで行かないと医療を受けられない、ということも発生します。見えないコストですね。

町内会費・自治会費

都市部の賃貸マンション住まいでは発生しなかった町内会費・自治会費は避けて通れません。田舎のコミュニティは、住民同士のつながりが密で、共助意識で成り立っています。町内会費・自治会費は、地域の催事、防災対策費用等に充当されます。町内会費・自治会費の支払いは義務でないにしても、支払わない場合は、地域からの孤立が避けられません。

農産物に対するお返し

農産物は無償で頂けるかもしれません。でも、「ただより高いものな無い」と言われるように、ずっと無償で頂いてばかりいると、地域社会からの孤立につながります。移住先で、ご自身も農作物を作っていれば、その農作物を返礼に使うことができます。しかし、農作物を作っていない場合は、別途、返礼品をどこかでお金を払って調達してくる必要が出てきます。「お返しはいらないよ」という類の言葉を、額面通り受け止めてはダメです。本音と建前は異なるのです。

都市部にくらべて物価が安くない?

田舎の物価は安いはず、と思っていると大きく目論見が外れます。スーパーやコンビニに陳列される商品の価格は、都市部と比べて大差ありません。また、場所によっては個人商店しかないことも考えられます。個人商店しか存在しないエリアは、店舗間競争が無く、加えて客数が少ないため、必然的に高めの値段設定になります。飲食店についても同じですね。おしゃれなレストランは存在しないし、あったとしても、都市部ならもっと安くて、もっと高品質な料理が食べられる、ということもあり得ます。

目に見えない店舗指定の縛りも存在します。地元の有力者、またはその親族が経営する店を使わないと、「地域経済に貢献していない」等、悪い噂が広がる可能性があります。Amazonや楽天ばかり使っていてはダメなのです。

地域社会への勤労奉仕が求められる

都市部の賃貸住宅に住んでいるのとは異なり、地域社会への勤労奉仕が求められます。具体的には、草刈り、公民館・神社などの清掃、ゴミ収集所の管理、消防団活動、町内会議、お祭りなど地域の催事などが挙げられます。当然ですが、これをやっても報酬はないか、あったとしても極めて僅かな金額です。やらずに逃げていると、地域からの孤立要因になります。

都心部では、人の目を気にしなくても、地域の催事に無関心でも生きていけますが、田舎ではそのような態度では、生きていくのが難しいと言えます。

地方移住・田舎暮らしで大切なこと

他所からやってきた人が田舎で生活するには、移住先地域のやり方を尊重し、大切に思う姿勢が不可欠です。他所から来た人が、都市部での生活スタイルをそのまま移住先に持ち込んだ場合、地域社会から受け入れられる訳がありません。「郷に入っては郷に従え」と言われるように、移住先のエリアでの生活スタイルをある程度は受け入れる必要があります。なので、誰の目も気にしないで、地域社会とは関わらず、悠々自適に暮らそう、という発想では地方移住は失敗します。移住先で生きていくためには、一人で生きていく、という発想ではなく、地域社会と共存する、という意識が大切です。

地方移住・田舎暮らしに対する代案

本記事の問、「地方移住・田舎暮らしで生活費は下がる?」に対する回答は、既にご想像のとおり、コストメリットはなさそう、ということになります。加えて、いきなり地方移住・田舎暮らしをするには、相当な覚悟が必要であることがお分かり頂けたかと思います。でも、やっぱり、人混みの環境からは距離を置きたい・・・・。そのようにお考えの方に、筆者から代案を2つご提案いたします。

都市近郊の田舎との2拠点生活をする

いきなり限界集落のような超ド田舎ではなく、都市近郊の田舎を探してみるのは如何でしょうか?東京近郊で考えるなら、千葉、埼玉、神奈川に候補地があります。都市近郊という立地であるが故、都心部に行きやすいというのもメリットです。週1日とか、月1日とか、オフィスに出勤する必要がある方にとっては手の届きやすい立地条件ではないでしょうか。また、近いので2拠点生活で、都会と田舎を楽しむという生活スタイルができるかもしれませんね。

移住定住に関する市町村の窓口及び主な移住支援制度
このページは、掲載希望があった千葉県内市町村の主な移住支援制度について掲載しています。
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神奈川県内市町村の移住・定住支援
神奈川県内市町村の移住・定住支援情報をを掲載しています。

大都市の衛星都市、あるいは地方都市に生活拠点を移してみる

大都市の衛星都市、地方都市への移住もお勧めです。大都市の衛星都市、地方都市のメリットとしては、

  • 東京程、家賃は高くなく、それでいて、もっと広い家に住むことができる。
  • 商業施設、飲食店、医療機関も一定数、存在している為、ド田舎のような不便さはない。
  • 一定の産業もある為、その地での就業も可能。
  • 車で30分もドライブすると自然豊かな環境が広がる。

というような点が挙げられます。都会と田舎の良い点を享受できる可能性があります。費用的にも都会と田舎のいいところ取りが期待できます。

コロナを機に働き方、生き方を変えたいと思った方、いきなり、職を変えるのではなく、まずは、簡単に変えられるところから検討してみてはいかがでしょうか?住む場所を変えるのは、職を変えるよりはハードルが低いですよ。